東南アジアの南部にあるインドネシア共和国。観光地だとバリ島や料理だとナシゴレン、産業だとマンダリンなどのコーヒーが有名ですね。
そのインドネシア、実は生産量が世界4位の紅茶生産国なんです。
日本での知名度はあまり無いですが、インドネシア紅茶には日本の飲料製品に使われている品種があったり、知らないうちに飲んでいるかもしれない品種があったりと意外と近くに存在しています。
そのインドネシアにはどんな紅茶があるのか。一覧とあわせてインドネシア紅茶の歴史や文化もご一緒に解説します。
インドネシア紅茶について
インドネシアは日本ではあまり知られてはいませんが、紅茶生産量4位の紅茶生産地です。
どちらかと言えばコーヒーのほうが有名かと思うのですが、インドネシアは紅茶の生産にも力を入れているんです
紅茶の生産地は主に「ジャワ島」と「スマトラ島」の2つです。どちらも火山島なので土壌は火山性。水はけがよく栄養も豊富な土壌では良質な茶葉が育ちます。
また気候も1年通して安定していて、季節で品質に大きな差が出ることはありません。
茶葉の収穫も基本1年中されています。つまりインドネシア紅茶は、1年中良質で品質も安定した茶葉が収穫できるんです!
元々農業国のインドネシアですから、栽培するにはとてもいい環境なんでしょうね
インドネシア紅茶一覧
インドネシアの紅茶の種類は2つ。「ジャワ」と「スマトラ」があります。ほかの地域でもわずかに生産されていますが、主に日本でも飲まれているのはこの2つです。
生産量はジャワが最も多く次にスマトラ。ただジャワの生産量が約18万トンに対して、スマトラが約1万8千トンとほぼ10倍の差があるので、インドネシアの総生産量のほとんどはジャワ紅茶になります。
インドネシアの紅茶①:ジャワ
ジャワはインドネシアのジャワ島で生産されています。最も盛んなのは西部、中部や東部でも生産されていますが、メインは西部です。
どんな食事と合わせても味わいを邪魔しない風味を持っていることから食中茶として人気があります。
日本のロングセラー飲料製品「ジャワティ」もジャワから作られているんですよ
【ジャワの特徴】
- 茶葉:赤褐色
- 味:クセ、渋味が少なくさらっとした後味
- 香り:フレッシュで穏やか
- ※水色:明るく澄んだ赤色
※水色:紅茶の抽出液の色
ジャワは全体的に落ち着いたマイルドな風味の紅茶です。
クセ、渋味が少なく後味もさらりとしていて香りも穏やか。とても飲みやすい味わいを持っています。
そのシンプルな風味がどんな食事、アレンジとも合わせやすく、自分の好みに合わせやすいです。
またクオリティーシーズンありませんが、代わりに5~11月の茶葉が特に良質とされています。
おすすめの飲み方はアイスティーです
ジャワについて詳しくはこちら↓
インドネシアの紅茶②:スマトラ
スマトラとは、インドネシアの東に位置するスマトラ島で生産されている紅茶です。世界最大のカルデラ湖「トバ湖」の周辺の傾斜地で主に栽培されています。
日本での知名度はあまりありませんが、ブレンドティー用にも使われているので、もしかしたら知らない間に飲んでいるかもしれない紅茶なんです。
【スマトラの特徴】
- 茶葉:やや黒い褐色
- 味:クセと渋味は少ない・コクが強く濃厚な味わい・甘みがある
- 香り:やや重いが穏やか
- 水色:暗い赤色
スマトラはクセや渋みが控えめ、濃厚でコクが強く全体的にはっきりとした味わいです。
香りは穏やかですが重厚さもあり、セイロンティーのローグロウンティーに似ていると言われています。
ジャワ紅茶と比べると、スマトラもマイルドな味わいですがジャワよりやや濃厚な味です。
そしてクオリティーシーズンは、乾季の7~9月に来ます。
スマトラのおすすめの飲み方はストレートティーとミルクティーです
スマトラについて詳しくはこちら↓
インドネシア紅茶の歴史
インドネシア紅茶の歴史は1690年から。当時のインドネシアはオランダの植民地で、すでに紅茶文化が浸透していたオランダがジャワ島で紅茶栽培を開始したのが始まりでした。
実は有名な紅茶生産国のインドやスリランカより歴史は古いんですよ
ただこの時点では産業と呼べるほどではなく、紅茶栽培が本格的になったのは1870年にプランテーションが作られてからです。
その後紅茶栽培に適した環境も手伝って、1940年代には世界三位の紅茶生産国になりました。
一時衰退した紅茶産業
世界三位までになったインドネシア紅茶でしたが、第二次世界大戦の影響で紅茶産業が一時衰退してしまいます。
茶園の3分の1が食糧用作物の生産に変わってしまい、その後もインドネシア独立戦争で復興が遅れてしまいました。
戦後の食糧難や内戦などの影響でも紅茶産業の回復に時間がかかってしまったんです
紅茶産業が復活し始めたのは1950年代。インドネシア政府の支援もあって生産量が増えていき、現在は世界4位にまで回復しました。
ただ2021年現在、紅茶産業の一部がほかの農作物に切り替わっていることもあって生産量は減ってきているようです。
せっかく生産量が回復したのに、また減ってしまうのはもったいないですね
インドネシアの紅茶文化
インドネシアは9割がイスラム教徒のためお酒を飲む文化があまりなく、代わりにコーヒーや紅茶を楽しむ文化があるそうです。
そんなインドネシアにはとても興味深い紅茶文化があるのでご紹介しますね。
インドネシアの紅茶文化①:ニャネウット
ニャネウットは、イスラム教徒が新年を迎えるときに行う西ジャワの伝統行事です。
紅茶の器は亜鉛製のカップかココナッツの殻を使うんですよ
飲み方の作法はまず
- 手のひらの上でガラスを2回回す
- 紅茶の香りを3回吸い込む
- 最後に紅茶を飲む
ニャネウットはこのような作法で紅茶を飲みます。また紅茶を飲む時には
- 里芋
- 揚げキャッサバ
- バナナ
- ピーナッツ
などのお菓子と一緒に一緒にいただくのが一般的です。
ちなみに紅茶に使う砂糖は黒砂糖です
インドネシアの紅茶文化②:ポチ茶
ポチ茶はジャワ島のチレボン・テガル・ぺマラン・ブレブスとその周辺地域にある文化です。
粘土でできた容器にジャスミン茶を注いで、ロックシュガー(氷砂糖)を入れて飲むのがポチ茶ですが、この時お茶はかき混ぜずに振るだけです。
混ぜないので最初は苦いんですが、ロックシュガーがゆっくり溶けて徐々に甘みを感じられます。
インドネシアでは熱々よりも少しぬるめの紅茶を飲むので、溶けるころにはちょうどいい温度になるんでしょうね
そしてその砂糖が解けるまでの過程に、「人生は苦いものだが、辛抱強く我慢すれば人生の甘さを得ることができる」という哲学が表されているそうですよ。
インドネシアの紅茶文化③:パテハン
パテハンとはジャワ島の都市、「ジョグジャカルタ」の宮殿で行われる伝統的なお茶会です。
王族や宮殿のお客のために行われる格式高いもので、インドネシアの方でもほとんどが見たことがないそうですよ。
パテハンはインドネシアの茶道ともいうべき文化なんですよ
まず給仕の方がお茶を提供していくんですが、この時立ち上がらずに低い姿勢で移動しながらお茶を提供します。
そしてお菓子を食べながら砂糖の入った甘いお茶を飲むんですが、この苦いお茶に甘い砂糖を入れるにも、「人生にはいい時も悪いときもある」という意味が込められているんだそうですよ。
まとめ
- インドネシアは紅茶生産量4位の紅茶生産地で生産地は主にジャワ島とスマトラ島
- 土壌は気候が栽培に適しているので1年通して良質な茶葉が安定して収穫できる
- インドネシアの紅茶にはジャワとスマトラがある
- ジャワはジャワ島の紅茶で全体的に落ち着いたマイルドな風味、食中茶として人気がある
- スマトラはスマトラ島の紅茶でクセや渋みが控えめだがはっきりとした味わい
- 1690年から紅茶栽培が始まり1870年に本格化したが一時紅茶産業が衰退し1950年代から回復した
- インドネシアにはニャネウット・ポチ茶・パテハンといった紅茶の文化がある
世界4位の紅茶生産国インドネシアは紅茶の歴史が古く、一時紅茶産業も衰退しましたが、その栽培環境もあって世界4位まで生産量を増やしました。
またインドネシア独自の紅茶文化も、ヨーロッパや日本とはまた違った魅力がありますね。
インドネシア紅茶のジャワとスマトラ。どちらもクセがなく飲みやすい紅茶ので是非一度飲んでみてください。2つを飲み比べてみてもいいかもしれませんよ。
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