インドと言えば何が思い浮かびますか?やはり一番多いのはカレーですかね?
カレーも有名ではありますが、インドは紅茶に詳しくない方にも多く知られているほどの紅茶の一大生産地でもあるんです。
そんな紅茶大国のインド。世界三大紅茶の一つや日本でも人気の紅茶があり、それぞれ個性的な味わいを持っています。
ですが「あれインドの紅茶だったんだ!知らなかった!」っと、知ってる紅茶だけど産地と結びついていない方も多いのではと思います。
そんな方々にも改めてインド紅茶の魅力をお伝えするために、この記事ではインド産紅茶の紹介や歴史をまとめて解説させていただきます。
インドの紅茶について
インドは年間約100万トン以上の紅茶が生産されている世界一の紅茶生産国です。世界の紅茶市場の半分以上がインド産紅茶と言われています。
インドの代表的な紅茶には日本でも有名なダージリンとアッサムがありますよ
インドの紅茶は同じ国内でも産地によって風味がガラッと変わるので、一口にインド紅茶と言ってもそれぞれとても個性豊かなんですよ。
インドは消費量も世界一だが輸出量は三位
インドの紅茶は生産量だけでなく消費量も世界一で、年間約90万トン以上が国内で消費されています。
インドの国内消費量が90万トンで生産量が100万トンということは・・?
もうお察しの方もいるでしょう。インドは生産量世界トップですが、そのほとんどは国内で消費されています。
そのため輸出量は約15万トンとさほど多くはありません。それでも元々の生産量が多いので、国内消費がほとんどといっても世界三位の輸出量なんですよ。
世界的にも人気だったり日本でも手軽に買えたりするのに輸出量が少ないってちょっと意外ですよね
インドはチャイ発祥の国!
インドで紅茶といえばミルクと砂糖、スパイスを加えて飲むチャイが主流となっています。
チャイは現地の言葉だとそのまんま「お茶」って意味なんですよ。インドの文化だとお茶と言えばチャイを指すんですね
そんなインドに根付いているチャイはインドが発祥なんですよ(諸説あります)
チャイが生まれた経緯は19世紀の時代です。当時のインドでは生産された良質な茶葉はイギリスに輸出されていて国内で飲めるのは「ダスト」と呼ばれる茶葉だけでした。
【ダストとは?】
カットした茶葉をふるいにかけた細かい最小サイズの茶葉のことです。抽出時間が早く味や色が濃く出やすいのでティーバッグや製菓用に使われています
このダスト、ストレートで飲むとどうしても苦みが強くなってしまうので、当初はインド国内での普及が進みませんでした。
今でこそ国内消費量世界一ですが、苦みが強く飲みにくいからかこの時代は消費がほとんどゼロに近かったんです
そんなダストをおいしく飲むためにはどうしたらいいかと現地の人たちが試行錯誤していく中で、元々インドにあったお湯やミルクでスパイスを煎じる習慣から着想を得て、紅茶や砂糖をスパイスと合わせたものが今日のチャイになったんです。
このチャイが誕生してから徐々に紅茶がインドに広まっていき、消費量世界一になるまでインドの生活に浸透していきました。
インドの方たちは飲み物というよりお菓子感覚でチャイを飲むそうですよ
チャイの入れ方についてはこちらをどうぞ↓
インドの紅茶一覧
インドでは主に北東部と南部で紅茶の栽培されています。
栽培地によって気候や気温など環境が違うのでインド紅茶と一口に言っても、世界や日本でも有名なものや幻と呼ばれる紅茶など個性豊かな紅茶がいくつもあります。
そこで!そんなインドにはどんな紅茶があるのか?それぞれの特徴をご紹介していきます!
ダージリン
インド北東部のダージリン地方で生産されている紅茶で、世界三大紅茶の一つです。切れ味のある渋味と深いコクがあります。
またダージリン特有のマスカットフレーバーと呼ばれるフルーティーな香りから、「紅茶のシャンパン」とも呼ばれています。
ダージリンはその香り高さから香りを楽しみながら飲める紅茶なんですよ!
【ダージリンの特徴】
ダージリンは収穫する季節ごとに茶葉の特徴が変わります。
収穫シーズンは年3回、春のファーストフラッシュ・夏のセカンドフラッシュ・秋のオータムナルです。
- 春摘みのファーストフラッシュ:収穫量の少ない初摘みの茶葉。爽やかさとほどよい渋味、緑茶に似た青々しさのある風味があります。
- 夏摘みセカンドフラッシュ:一番人気の高いシーズン。初摘みの茶葉より味や香りが濃くなり、マスカットフレーバーが特に強く感じられます。
- 秋摘みのオータムナル:渋味が強く味も濃厚で深い甘みとコクがあります。強い渋味も甘みがまろやかにしてくれるので意外と飲みやすく、紅茶初心者にもおすすめです。
おすすめの飲み方は香りを楽しめるストレートティーとオータムナルならミルクティーです
ダージリンについてはこちら↓
アッサム
インド北東部のアッサム地方で生産されている紅茶です。インド国内の生産量が一番多く、インドで生産されている紅茶の半分はアッサムが占めています。
インド国内ではチャイ用としての需要が高く、大量の需要に応えるためアッサムの約90%はCTC製法で作られていています。
CTC製法は茶葉を細かくして粒状に丸める製法のことです。短時間でも濃いめの味が出るのでティーバッグやチャイ、ミルクティー向きなんですよ
【アッサムの特徴】
- 茶葉:黒褐色
- 香り:麦芽に似た自然な甘い香り
- 味:甘みがあり濃厚でコクがある味わい
- ※水色:濃い赤褐色
※水色:紅茶の抽出液の色
アッサムは甘みが強く濃厚でコクの深い味わいがあります。その風味はミルクを入れても負けないので、チャイやミルクティーと相性がいい紅茶です。
ミルクティーももちろんおすすめの飲み方ですが、ハチミツを入れたキャンブリックティーもおすすめです
アッサムについてはこちら↓
ニルギリ
インドの南、西ガーツ山脈南部のニルギリ丘陵で生産されている紅茶です。ニルギリは現地の言葉で「青い山」という意味で「紅茶のブルーマウンテン」とも呼ばれています。
ニルギリは北東部のダージリンやアッサムと違いインドの南にあるので、この両者とはまた違った風味を持っています。
ニルギリはインドと同じく紅茶の生産地で有名なスリランカの近くにあるので、セイロンティーに近い風味もあるんですよ
【ニルギリの特徴】
- 茶葉:茶褐色
- 香り:柑橘系のようなフルーティーで爽やかな香り、ほのかに甘さもある
- 味:渋味やクセがなくさっぱりとした味
- 水色:明るく澄んだオレンジ色
ニルギリは渋味が弱く香りも穏やかで味にクセもないことから、紅茶初心者や苦手な方におすすめです。シンプルな風味なので食事やお菓子に合わせやすいですね。シンプルな味わいなのでブレンドのベースにもぴったりです。
飲み方はフルーツとの相性の良さからフルーツティーと濁りにくさからアイスティーがおすすめです
ニルギリについてはこちら↓
ドアーズ
インド北東部の西ベンガル州ドアーズ地方で生産されている紅茶です。アッサム地方とダージリン地方に挟まれた低地の丘陵地帯で栽培されています。
国内消費がほとんどのため日本での認知度は低いですが、控えめな味わいからブレンドやフレーバーティーによく使われていることが多いです。
あまり知られてない紅茶ですがブレンドによく使われているので、もしかしたら知らないうちに飲んでるかもしれませんよ
【ドアーズの特徴】
- 茶葉:黒色
- 味:控えめな苦みとコクがあり渋味は少なめ
- 香り:あっさり控えめ
- 水色:濃いオレンジ色
味と香りは控えめですがクセがなくマイルドなコクがあり、口当たりもよくあっさりして飲みやすいです。
秋に収穫されるセカンドフラッシュは、バラのような香りがするので「ローズオータムナル」とも呼ばれています。
風味が控えめなので色んな飲み方と合わせやすいですが、コクと水色の濃さからミルクティーやチャイとの相性がいいですよ
ドアーズについてはこちら↓
シッキム
インド北東部のシッキム州で生産されている紅茶です。インドで唯一政府が経営しているテミ茶園でのみ栽培されていて、生産量が年間約100トンの希少性から「幻の紅茶」と呼ばれています。
また、州をあげて農薬を使わないオーガニック農法にこだわって栽培されているので、体に優しい紅茶でもあるんですよ。
幻という響きになんだかロマンを感じますね~
【シッキムの特徴】
- 茶葉:発酵が弱いので緑の茶葉が混じっている
- 味:繊細な味わいと濃厚なコク、後味は爽やか
- 香り:甘みがあるフラワリーな香り
栽培地がダージリンと隣接しているためダージリンと風味が似ていますが、ダージリンより渋味が少なく甘く華やかな香りがします。
おすすめの飲み方は香りを楽しめるストレートティーとレモンティー。アイスティーもおすすめです。
シッキムについてはこちら↓
インドの紅茶の歴史について
今でこそ世界一の紅茶生産国になったインド。そこに至るまでの歴史には
- 東インド会社の設立・紅茶貿易
- アッサム種の発見
といった出来事がありました。
東インド会社の紅茶貿易
東インド会社とは、1600年にイギリスやオランダ、フランスなどヨーロッパの国がそれぞれ設立した貿易会社です。この会社は輸入したものを本国に送る、いわば「各国のインドにある貿易拠点」のようなものでした。
その中でもイギリスの東インド会社は後に、貿易会社でありながらインドの政治を担ったり軍隊を持っていたりなど、インドを統治する権利も持つことにもなるんですよ
まず初めに東インド会社で紅茶の輸入を始めたのはオランダです。オランダが初めてヨーロッパに紅茶を広めた国なんですよ。
オランダは1637年から紅茶発祥の地、中国から直接買い付けるようになり、1680年代に入ってからはイギリス東インド会社もオランダなどから間接的に買い付け、イギリス本国に送っていました。
そしてイギリスも、国内で紅茶が浸透しはじめた1717年から直接中国から輸入するようになったんです。
この時点ではインドは紅茶輸入の中間地点や拠点のようなものだったんですね。
アッサム種の発見がインド紅茶発展のきっかけに
まず、インドで紅茶を栽培しようと動いたのはイギリスです。
当時インドの植民地化を進めていたイギリスは、中国よりも近いインドで紅茶を栽培しようとしましたが、インドでは中国原産のチャノキ(以下中国種)はうまく栽培できませんでした。
インドの気候では中国種はうまく育たなかったんですね
そのインドがなぜ世界一の紅茶生産国なったのか?それは1823年に東インド会社の軍に所属していたイギリス人の「ロバート・ブルース」が、アッサムの奥地に自生していた「アッサム種」を発見したことが大きなきっかけになったんです。
このアッサム種の発見でインドでの紅茶栽培に希望を見出したロバートでしたが、発見から少し後に病に倒れ、残念ながら発見の翌年に亡くなってしまいます。
ですが、ロバートはこの事を弟の「チャールズ・アレキサンダー・ブルース」に伝えていて、チャールズが兄の遺志を継いでこのアッサム種を手に入れました。
アッサム種の茶の木と種を手に入れたチャールズは発見したアッサムの地で栽培をはじめることになります
1834年には「茶業委員会」が設立されインドでの紅茶栽培も本格化していきました。
アッサム種の栽培や品種改良などの研究を進め、弟のチャールズもアッサム種栽培の責任者に任命されて、その後の紅茶産業に大きく貢献していきます。
そして1838年、ロンドンのティーオークションに出品されたアッサム種は高評価を受けるまでの紅茶になりました。そこからインドでのアッサム種の栽培をどんどん拡大させ国内に広まり、インドの紅茶産業はどんどん発展していきます。
アッサム種は中国種よりも葉が大きく大量生産しやすいメリットもあります。つまりより多く生産できる品種であることも今日の紅茶一大生産国につながったんでしょうね
さらに中国種との交配も進んで、スリランカやアフリカなどにも伝わりさまざまな紅茶が誕生していきました。この事もアッサム種発見が世界の紅茶の発展にもつながったことがうかがえますね。
ちなみにインドでの栽培が上手くいかなかった中国種ですが、1841年ごろ唯一ダージリンでの栽培が成功したことで、ダージリンは国内唯一の中国種インド紅茶になったんですよ。
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まとめ
- インドは世界の紅茶市場の半分を占める生産量を誇る紅茶大国
- 消費量も世界一のため輸出量は世界三位
- チャイはインド発祥。国内ではほとんどチャイで紅茶が飲まれている
- インドの紅茶にはダージリンやアッサムなどの有名な紅茶や紅茶好きに人気の紅茶などがある
- インドは昔ヨーロッパ各国が紅茶などを輸入する貿易会社があったがインドに紅茶はなかった
- 1823年にブルース兄弟がアッサム種を見つけ尽力したことでインド産の紅茶が生産できるようになった
インドは世界一の紅茶生産国でインド国内でも多くの国民が愛飲する紅茶大国です。
ダージリンやアッサムのような有名なものや紅茶好きに人気で、中には幻と言われている紅茶など個性的な紅茶が多数あります。
そんなインド紅茶の歴史も紐解いていくと、ブルース兄弟のアッサム種発見はインドのみならず世界の紅茶文化にとっても大きな出来事だったことがわかりますね。
世界中の人に愛されるインド紅茶。個性的な紅茶がいくつもあるので自分好みの紅茶も見つかるかもしれませんよ!
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