中国のお茶といえば中国茶やウーロン茶などのイメージが強く、紅茶のイメージはあまりないのではと思います。
ですが実は、中国は紅茶発祥の地なんです。
紅茶といえばヨーロッパを連想しますがそのルーツは中国にあり、現在でも中国各地で紅茶が生産されています。
そんな中国にはどんな紅茶があり、どんな紅茶のルーツがあるのか?
この記事では中国の紅茶や発祥について解説します。
中国は紅茶発祥の地
中国は紅茶発祥の地ですが、そもそも緑茶やウーロン茶など全てのお茶の発祥地でもあります。
紅茶や緑茶、ウーロン茶は元々同じチャノキから作られているんですよ。違うのは発酵の度合いで、紅茶>ウーロン茶>緑茶の順に発酵されています
お茶自体は589年から中国で普及し始めましたが、紅茶が生まれたのは17世紀後半。
17世紀の初めごろにオランダ、その後イギリスに中国のお茶が輸入されていましたが、17世紀後半イギリスに輸入されていた「武夷茶(当時のウーロン茶)」が輸入される過程で紅茶になったんです。
紅茶になった過程にはより需要に合わせて発酵を進めた、長期の輸送でも傷みにくくするために発酵を強めたなどの諸説あります
そして紅茶人気が高まっていたイギリスが、当時の植民地であったインドやスリランカで紅茶の生産を始めたことやトワイニングなどの紅茶会社の誕生もあり、世界の紅茶生産や需要も増え今日の紅茶文化の発展につながりました。
つまり、中国で生まれた紅茶はイギリスを経て世界に広まっていったんですね
現在の中国紅茶は?
中国から始まった紅茶ですが、実は現在の紅茶生産量はさほど多くありません。
中国はお茶全体の生産量約297万トンと世界一の生産量がありますが、紅茶の生産量はその10%ほど。その生産量も年々減っています。
これは中国のお茶生産が一時期衰退してしまったことや、国内需要が紅茶よりも緑茶にあることがあるようです。
中国で紅茶が生まれたからといって、国内で紅茶人気があるとは限らないんですね・・
ですが中国紅茶はヨーロッパでの人気があり、イギリス王室御用達の紅茶や日本ではイギリス経由でしか手に入らない紅茶があるなど、特にイギリス需要が高いです。
そのため、紅茶生産の9割は輸出用になっています。
紅茶の歴史について詳しくはこちら↓
中国紅茶の特徴と一覧
中国の紅茶は全体的に渋味が少なく甘みがあり、ストレートティーでも飲みやすい味わいです。
クセがありそうなイメージの中国のお茶ですが、意外にスルッと飲めてしまうんですよ。
ただ、中には特徴的な香りの紅茶もあるのでそこで好みがわかれることもあります・・・
そんな中国紅茶にはどんな紅茶があるかと言いますと
- 世界三大紅茶の「キーマン」
- フレーバーティーの元祖「ラプサンスーチョン」
- 浅い歴史ながら代表格になった「雲南紅茶」
などなど個性的で魅力のある紅茶があります。
この3つのように中国にはおいしい紅茶があるのに、生産量が減っているのがなんだかもったいないんですよ~
中国の紅茶①:キーマン
キーマンは中国の安徽省祁門県で生産されている紅茶です。中国紅茶の中心的な存在と言えます。
またキーマンは品質や味、香りが特に優れているとされている3つの紅茶の産地を指した世界三大紅茶にも数えられています。
【キーマンの特徴】
- 茶葉:黒褐色
- 味:まろやかな甘みにコク、渋味は少ない
- 香り:スモーキーな香り、高品質は蘭のような香り
- ※水色:澄んだ明るいオレンジ色
※水色:紅茶の抽出液の色
キーマンは渋味が少なくまろやかな甘みとしっかりとしたコクがあり、比較的飲みやすい味わいです。
香りはスモーキーな香りのものや、高品質になると蘭のような花やかな香りが感じられますが、香りで好みがわかれやすい紅茶でもあります。
ですがその香り高さから「中国茶のブルゴーニュワイン」と呼ばれ、ヨーロッパ人気が高いです。
おすすめの飲み方はストレートティーとミルクティー。キーマンベースのアールグレイもおすすめです
キーマンについてさらに知りたい方はこちら↓
中国の紅茶②:ラプサンスーチョン
ラプサンスーチョンは中国の福建省武夷山市周辺で生産されている紅茶です。漢字だと「正山小種」と表記されることもあります。
紅茶発祥の地の武夷山で作られた世界初のフレーバーティーで、紅茶の起源とも言える紅茶なんです。
あの有名なアールグレイもラプサンスーチョンから生まれたと言われているんですよ
【ラプサンスーチョンの特徴】
- 茶葉:黒くツヤがある
- 味:控えめな渋味とコク、スッキリとした後味
- 香り:独特の燻製香
- 水色:褐色がかったオレンジ
ラプサンスーチョンはコクや渋みが少なく後味もスッキリしています。全体的に穏やかでさっぱりとした味わいです。
そしてラプサンスーチョンには独特の燻製香があります。某胃腸薬の香りに似ているので、好みが分かれることもありますが、この香りが癖になりハマってしまう方も少なくないとか。
おすすめの飲み方はストレートティー。香りが苦手ならミルクティーにして飲むのもおすすめです
ラプサンスーチョンについてさらに知りたい方はこちら↓
中国の紅茶③:雲南紅茶
雲南紅茶とは中国の雲南省で生産されている紅茶です。「滇紅」と呼ばれることも。
20世紀後半から生産が始まったので歴史は浅いですが、中国紅茶の代表格の一つとされています。
雲南省はほかにプーアル茶の生産でも有名な地域なんですよ
【雲南紅茶の特徴】
- 茶葉:黒褐色の茶葉に明るい褐色のチップ(芯芽)が混ざっている
- 味:ハチミツのような甘みに強いコク、渋味は弱め
- 香り:スパイシーさのある香り
- 水色:赤みの強いオレンジ色
雲南紅茶はハチミツを思わせる濃厚な甘みと強いコクに、ほどよく喉ごしのいい渋味があります。全体的に重厚ではっきりとした味わいのとても深みのある紅茶です。
そして香りにはスパイシーさや甘い香りも。
またインドのアッサム種に近い品種の茶葉で生産されているので、アッサムに似た特徴を持っています。ただアッサムよりも渋味が少なく柔らかい印象の味わいです。
おすすめの飲み方はストレートティーとミルクティーです
雲南紅茶についてさらに知りたい方はこちら↓
その他の中国紅茶
ここまで代表的な中国紅茶を紹介しましたが、中国にはほかにも紅茶が生産されています。
昔からお茶を生産している茶園などでは紅茶生産しているところも多く、日本だと手に入りにくい紅茶もありますが専門店で買えるものもあるので、それぞれ飲み比べてみても良いかもしれませんよ。
その他の中国紅茶①:広東省・「英徳紅茶」
広東省の英徳市で生産されている、1960年代から生産が始まった比較的新しい紅茶です。
昔は海外で人気の品種でしたが、英徳市が産業開発を進めたことで農業が衰退し、現在英徳紅茶の生産は英徳市にある茶葉研究所で作っているもののみになっています。
英徳紅茶の茶葉にはさまざまな品種が使われていますが、メインで使われているのは雲南大葉樹と呼ばれる品種です。
そのため雲南紅茶に風味が似ていますが、雲南紅茶よりも渋味が少なくまろやかで、甘い香りがします。
その他の中国紅茶②:浙江省・「九曲紅梅」
緑茶の生産地として有名な浙江省の杭州市で唯一生産されている紅茶です。
元々福建省から移り住んだ人たちが杭州市に移り住んだ際に、紅茶の製法を伝えたことが始まりとされているので、そのルーツは紅茶発祥の武夷山にあります。
渋味が少なくマイルドで甘みのある味わいに柔らかく芳醇な香りを持った、繊細さのある紅茶です。
その他の中国紅茶③:湖北省・「宜紅工夫」
湖北省の鄂西山区の宜昌市と恩施市で生産されている紅茶です。少なくとも8世紀からの歴史あるお茶の産地で、紅茶生産は19世紀中期から行われています。
さっぱりとした風味にうまみのある味わいが特徴。
その他の中国紅茶④:江西省・「寧紅工夫」
江西省の九江市修水県で生産されている紅茶です。最も古い紅茶の一つとされています。
茶葉はツヤがあり赤みを帯びたオレンジ色。香り高く甘さがある風味に、長く続く余韻が特徴です。
その他の中国紅茶⑤:福建省・「坦洋工夫」「政和工夫」「白琳工夫」
紅茶発祥の武夷山がある福建省では、ラプサンスーチョン以外に坦洋工夫、政和工夫、白琳工夫の3つの紅茶が生産されています。
この3つの紅茶は「福建3大工夫紅茶」と呼ばれているんですよ
坦洋工夫
福建省の福安市坦洋村で生産されている紅茶です。その生産は1851年から始まり長い歴史があります。
全体的に甘く落ち着いた味わいで、芳醇な香りが特徴です。
政和工夫
福建省北部の政和県で生産されていて、紅茶のルーツといわれている紅茶です。
濃厚で香り高くなめらかで甘みのある味わいがあります。砂糖とミルクとの相性も良いです。
白琳工夫
福建省の福鼎市白琳鎮で生産されている、100年の歴史がある紅茶です。
なめらかな口当たりとコクのある自然な甘さの味わいがあり、クセが少ないので飲みやすさがあります。
と、このように中国にはいろんな紅茶があるんですね~
それぞれ個性のあるおいしい紅茶なんですが、年々中国全体の紅茶生産量が減っているのがなんだかもったいないですね。
まとめ
- 中国はお茶の発祥地であり紅茶の発祥地でもある
- 紅茶はイギリスに輸入される過程で生まれ、その後世界中に広まっていった
- 現在は緑茶需要に押され中国紅茶の生産量が減っている
- 中国紅茶は全体的に渋味が少なく甘みがあり意外と飲みやすい味わい
- 世界三大紅茶の「キーマン」やフレーバーティーの元祖「ラプサンスーチョン」に浅い歴史ながら代表格になった「雲南紅茶」などほかにもさまざまな紅茶がある
紅茶が生まれた中国の地にはさまざまな紅茶がありますね。
特にヨーロッパ人気が高く、日本にも中国紅茶に魅了されたファンがいます。
ですが中国国内では緑茶需要が高く、緑茶の生産量が増えていますが逆に紅茶生産量は年々減っています。
中国紅茶を根強く残そうとする動きもあるので、今後も中国紅茶の生産は続けていってほしいものです。
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