食べ物やサービスなどには、品質やランクが等級で区分されているものがありますよね。
その等級、実は紅茶の世界にも存在しているんです。
紅茶の等級と聞くと、紅茶のおいしさでランク付けされているのかな?と最初は思ってしまうかもしれませんが、紅茶の等級はまた少し違った区分で分けられているんです。
では紅茶の等級とは何なのか?この記事では紅茶の等級の区分や特徴について解説します。
紅茶の等級は何で決まる?
紅茶の等級は上の等級になればおいしい、下の等級になればおいしくないといった味などでランク付けをしたものではありません。
それでは何で区分されているのかというと
- 茶葉のサイズ
- 茶葉の細かさ
- チップと呼ばれる芯芽の含有量
主にこの3つの要素で等級が分けられています。
ならなぜ茶葉を等級で分けるのか?それは、サイズと細かさで成分の抽出時間が、芯芽の含有量で紅茶のうま味が変わってくるからです。
等級区分その1:茶葉のサイズ
紅茶の茶葉は部位によってサイズが違います。上の葉は小さく、下の葉になるほど大きいです。
紅茶の茶葉は大きいほど茶葉の抽出時間が長く、小さいと短くなります。そのため色んな大きさの茶葉が混ざってしまうと、紅茶の成分がバラバラに出てしまい味にムラができてしまうので、茶葉の大きさをそろえてバランスをとるために等級で分けているんです。
ちなみに茶葉が水分を吸ってうま味成分を出すことを「茶葉が開く」というんですよ
また、サイズの大きな茶葉で製造された紅茶は量が多くなるので、比較的安価で手に入る傾向がありますよ。
茶葉の等級一覧:茶葉のサイズ
茶葉は部位よってそれぞれ等級がついています。
茶葉の部位の名前↓
茶葉の部位は大きさだけでなく、味や香り、紅茶の※水色なども変わってくるので、抽出時間や量だけでなく、それぞれの茶葉の品種に合わせたサイズが使われることも多いです。
※抽出した紅茶の色のこと
英語表記は等級の略称です。英語表記されている製品も多いので一緒に記載しておきますね、あと記事内では基本略称表記にします
フラワリーオレンジペコー(FOP)
茶葉の最先端でまだ開いてない新芽の部分。下記のOPに一定量の芯芽(チップ)が含まれている茶葉のことです。
高級な紅茶に多く入っていて、チップの多さでさらに区分されています。
ちなみにフラワリーとは「花のような」という意味で質のいい茶葉の例えに使われてるんですよ
オレンジペコー(OP)
よく品種名だったり、オレンジの香りがする紅茶だと誤解されがちなOPですが、実は等級の名前なんですよ。
OPは上から2枚目の葉。若い葉のうち芯芽が少量、もしくは入っていないもののことで、細くねじった形状をしています。
渋味やえぐみが少なく品質の高い茶葉に使われることが多いです。
例えばインドのダージリンはOPを使ったものが多いですね
またOPもチップの多さでさらに区分されています。
OPが多いダージリンについて詳しくはこちら↓
【オレンジペコーが誤解されがちな理由】
なぜOPは名前が知られていて、紅茶の種類や品名と誤解されがちなのか。おそらくそれは、紅茶メーカーのトワイニングから「オレンジペコ」という製品が販売されているからではないかと思います。
トワイニングのオレンジペコはセイロンティーのブレンド紅茶で、質のいいセイロンティーのことを昔はオレンジペコと呼んでいて、そこから長年ブランド名として使っていました。
そこからオレンジペコの名前が有名になり、紅茶の品種名だと誤解されてしまったのでしょう。
ペコー(P)
上から3番目の葉。OPの下の部分の葉で、OPよりも少し硬めで葉が太くて短いです。水色や香りは薄いですが味にコクがあります。
ここまでのFOPからPは一芯二葉と呼び、上からPまでの葉を摘むのが良い紅茶を作るための摘み方とされているんです。
そして、葉が小さく紅茶葉の量が少なくなるので、高い価格で売買されることもあります。
ペコースーチョン(PS)
上から4番目の葉。Pの下の部分の葉で、Pよりも硬く太くて短いです。香りが弱まり水色もさらに薄くなっています。
先ほど解説した一芯二葉にPSが加わると一芯三葉と呼ばれ、茶葉の量が倍に増えるので低価格で気軽に飲める紅茶になります。
スーチョン(S)
上から5枚目の葉。PSの下の部分の葉でPSよりも葉が硬く大きく丸みがあり、葉が大きいので抽出時間が長くなりますが、しっかりした味わいを持っています。
スーチョンは紅茶に使われることがあまりないですが、中国の紅茶はスーチョンを使うことが多いです。
それがなぜかといいますと、中国の茶園の環境だと新芽よりもスーチョンのほうが生育が早いので、スーチョンで紅茶を作っているからなんです。
スーチョンという名前も中国の紅茶ラプサンスーチョンから名前が付いたんですよ!
【ペコーの名前の由来】
ペコーの語源は中国の白茶の若芽から来ています。白茶の若芽には白い産毛が生えていることから、中国語で白い産毛という意味の白毫という名前がついているんです。
その白毫が英語になるときに訛ってペコーになったのが由来になり、それが紅茶の等級にも使われるようなりました。
等級区分その2:茶葉の細かさ
茶葉のサイズごとに等級があるように、カットの細かさにもそれぞれ等級があります。
【茶葉の細かさの等級】
- フルリーフ
- ブロークン
- ファニングス
- ダスト
- CTC
サイズによって抽出時間が変わるのと同様に、そのままの葉を使った茶葉やカットした葉、カットしてさらにふるいにかけた葉など、カットの細かさでも抽出時間や香りが変わるんです。
さらに、サイズやカットの仕方によって、等級がさまざまな呼び方に枝分かれしていき、例えばOPをカットした茶葉やさらにふるいにかけた茶葉もそれぞれ別に等級がついています。
このカットの等級やチップ量の等級が加わってくると、等級名がすご~く長くなるんですよ~
茶葉の等級一覧:茶葉の細かさ
フルリーフ
カットしていないそのままの状態の茶葉。抽出に時間がかかりますが、茶葉の開きが良く香り豊かな特徴があります。ただ茶葉をカットしていない分、量が少なくなるので高値で取引されることも。
またフルリーフの場合、特に等級で表記されることはなくサイズの等級のみの表記になります。
ブロークン(B)
細かくカットした茶葉。Bは抽出時間が短く、味は濃厚で香りが強く水色も濃くなります。フルリーフよりも茶葉の量が増えるので、比較的安価です。
茶葉をカットするとサイズの等級にBが加わり、さらに等級の種類が増えます。
- フラワリーブロークンオレンジペコー(FBOP)
FOPを細かくカットした茶葉。抽出時間は短め、チップの量でさらに等級がつきます。
- ブロークンオレンジペコー(BOP)
OPを細かくカットした茶葉。フルリーフのOPと風味は同じですが、水色は濃いめで香りも強くコクがあり短時間でもしっかり紅茶の成分が出ます。こちらもチップの量でさらに等級がつきます。
紅茶の等級の中で一番需要があり、セイロンティーに多い等級です。
- ブロークンペコー(BP)
Pを細かくカットした茶葉で、BOPよりも茶葉が大きめ。
水色は若干薄く、ブレンドティーや増量用に使われることが多いです。
- ブロークンペコースーチョン(BPS)
PSを細かくカットした茶葉。BPよりもさらに茶葉が大きいです。
BP同様、ブレンドティーや増量用に使われています。
ファニングス(F)
BOPをふるいにかけてさらに細かくした茶葉。Bよりもさらに抽出時間が短く水色も濃くなります。
香りと味がしっかり出るのでミルクティー向きで、ティーバッグ用に使われることも多いです。
- ブロークンオレンジペコーファニングス
BOPをさらにふるいにかけた茶葉。ティーバッグやブレンド用に使われることが多いです。
ダスト(D)
Fよりもさらに細かい茶葉。茶葉のサイズでは最小で、抽出時間も一番早く水色が濃く香りも強いです。
用途のほとんどはティーバッグで、製菓用などにも使われます。
等級区分その3:チップの含有量
先ほどFOPやOPの解説で、チップ量でさらに等級が区分されると書きましたが、そもそもチップとは収穫する年の一番初めに摘んだ芯芽のことです。
チップが多いと頭にティッピー(T)の等級がつくんですよ
このチップ、単独だとおいしい紅茶にはなりませんが、ほかの茶葉と混ぜるとうま味成分を持ったとろみが出て上質な紅茶になるので、含まれる量が増えれば増えるほど等級が高くなります。
また、このチップの中でも
- 希少で加工も難しい銀色に見えるシルバーチップ
- さらに希少で加工も難しい金色に見えるゴールデンチップ
この2つが入った紅茶は最高級品とされています。
茶葉の等級一覧:チップ含有量・フルリーフの茶葉
ゴールデンフラワリーオレンジペコー(GFOP)
FOPにゴールデンチップが含まれている茶葉。
ティッピーゴールデンフラワリーオレンジペコー(TGFOP)
FOPにゴールデンチップが“多く”含まれている茶葉。
シルバーティッピーゴールデンフラワリーオレンジペコー(STGFOP)
TGFOPにさらにシルバーチップが“多く”含まれている茶葉。
ファイネストティッピーゴールデンフラワリーオレンジペコー(FTGFOP)
TGFOPよりもさらにゴールデンチップが“多く”含まれている茶葉。等級の中でも最上級。
茶葉の等級一覧:チップ含有量・ブロークンの茶葉
ゴールデンブロークンオレンジペコー(GBOP)
ゴールデンチップを含んだOPを細かくカットした茶葉。
ティッピーゴールデンブロークンオレンジペコー(TGBOP)
ゴールデンチップを“多く”含んだOPを細かくカットした茶葉。
ゴールデンフラワリーブロークンオレンジペコー(GFBOP)
GFOPを細かくカットした茶葉。
ティッピーゴールデンフラワリーブロークンオレンジペコー(TGFBOP)
TGFOPを細かくカットした茶葉。ブロークンの等級で最上級。
チップの等級まで加わるとほんとに名前が長くなってややこしくなりますね・・・
【中国紅茶キーマンの等級】
中国産の紅茶である「キーマン」は、一般的な紅茶の等級とはまた違う等級で分けられています。
キーマンの等級はサイズなどではなく単純に品質で分けられていて、上の等級になると国賓や政府高官への贈呈用にされるほどの高級品で、日本ではめったにお目にかかれません。
一般的な等級と混ざって混乱する方は、英語表記が一般的な等級、キーマンの等級は漢字表記と覚えたらややこしくないですよ。
キーマンについて詳しくはこちら↓
等級ではなく製法名?CTC製法とは?
CTC製法は茶葉の等級とは少し違いますが、この製法で加工された茶葉にも等級がつくので合わせて記述します。
等級がつく場合は等級名の頭にCTCがつくんですよ
ここまで解説した製法はすべてオーソドックス製法といい、茶葉を摘んで人の手や機械で乾燥させたり揉んだりする、伝統的な紅茶の製法です。
CTC製法はオーソドックス製法とは少し異なる製法で加工されます。
CTCとは
- C:クラッシュ(つぶす)
- T:ティア(引き裂く)
- C:カール(丸める)
の略で専用の機械で茶葉をほぼ粉状にしたものを粒状に丸める製法です。オーソドックス製法と違いすべて機械で作業するので、作業効率がよく大量生産できるメリットがあります。
インドのアッサム地方発祥の製法で、抽出時間が短くしっかりとした味とコクが出やすいです。そのためティーバッグやミルクティーに最適な製法として、この加工している茶園も多くあります。
特に発祥であるアッサムやケニアなどアフリカの茶葉は、CTCで加工されていることがほとんどです。
アッサム地方は元々ミルクティー向きの紅茶を作っている地域なので、よりミルクティーに向いた形状が生まれたんでしょうね
CTC製法発祥のアッサムについて詳しくはこちら↓
まとめ
- 紅茶の等級は茶葉のサイズやチップの量で区分されている
- サイズがバラバラだと味にムラができるのでサイズごとに等級で分けてそろえている
- 茶葉のサイズの等級は部位ごとにつけられている
- カットの細かさによってさらに等級が加わる
- 茶葉は小さく細かいほど抽出時間が早くなり水色と味、香りが強くなる
- 茶葉が大きいと抽出時間が長くなるが香り豊かな茶葉になる
- チップの含有量は量で等級分けされていて量が増えるほどうま味が増し等級が高くなる
- CTC製法は専用の機械で粒状にした茶葉。ミルクティーやティーバッグ向き
紅茶の等級はおいしさなどでランク付けしたものではなく、サイズやチップの量で区分したものです。等級ごとに分けると同じサイズでそろえやすくなり、紅茶の味ムラが無くなるのでおいしく飲むためにも必要なものなんですね。
OPやBなど多くの等級があるので覚えるにはちょっと大変ですが、等級を知ればより深く紅茶を知ることができます。
香り高い紅茶がいいならフルリーフ。飲みたい!と思った時すぐに飲みたいならBなど好みや気分で選んでもいいでしょう。
この記事が紅茶を選ぶときの手助けになれば幸いです。
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