皆さんは紅茶の話の中でセイロンティーという名前を聞いたことがありますか?比較的知名度があるので、詳しくなくても聞いたことある方もいるかと思います。
そのセイロンティー、紅茶初心者などあまり詳しくない方からは品種名だと思われがちだったりするんですが、実は紅茶の品種ではないんです。
では一体セイロンティーとは何なのか?この記事ではセイロンティーの基本情報や一覧まとめ、特徴と歴史についてなどを解説します。
セイロンティーとは何?
セイロンティーとは紅茶の一品種を指した名前ではなく、スリランカ産の紅茶を全部まとめた呼び名のことです。
日本に輸入される紅茶の6割はセイロンティーで、そのためか日本人に親しみやすく飲みやすい味わいを持っています。
キリンの「午後の紅茶」やコカ・コーラの「紅茶花伝」に使われているのもセイロンティーなんですよ
そして、スリランカ産の紅茶には大きく分けて7つの産地があります。
- ヌワラエリア
- ウダプセラワ
- ウバ
- ディンブラ
- キャンディ
- サバラガムワ
- ルフナ
この7つの紅茶の総称がセイロンティーと呼ばれています。どれも同じ国内で栽培されていますが、驚くほどそれぞれ違った特徴を持っているんですよ。
同じ括りでも紅茶の風味が大分違うので、中々奥深いんですよ~
なぜセイロンティーと呼ぶのか?
ここで、なぜスリランカ産の紅茶なのにスリランカティーではなくセイロンティーと呼ぶのか?疑問が出てきますよね。
中国茶や日本茶は国の名前がつくのになんででしょうね?
なぜセイロンティーと呼ぶのか?それは昔、スリランカがセイロンと呼ばれていたからなんです。
スリランカで紅茶産業が始まった時代、実はまだ国ではなくイギリスの植民地で、その頃は「イギリス領セイロン」と呼ばれていました。
その後独立して「セイロン」の国名になり、さらにその後スリランカの国名になりましたが、紅茶産業が始まった頃の名残で今でもセイロンティーと呼ばれているんですね。
セイロンティーは標高によって風味が変わる
スリランカは北海道よりも面積が狭い国です。その国土の中で7つも紅茶を栽培していて、しかもそれぞれが違う特徴を持っているのも不思議ですね。
実はスリランカの北部は平坦な土地が続いていますが、南部は山岳地帯が多く標高差のある土地が増えます。
高い場所と低い場所では気候が変わりますし、標高の高い場所は季節によって気温や降雨量も変わるので、その標高や土地ごとに違う気候が茶葉に影響を与えて、さまざまな風味の紅茶が育成されるんです。
だからでしょうか?茶葉の栽培地も標高差のある南部のほうに集中してるんですよ
セイロンティーの標高分類と特徴
セイロンティーは標高、つまり栽培されている地域の高さで3つ分類されています。それぞれ、標高ごとに気候が変わることで、風味など違った特徴を持っているためですね。
標高で分ける基準は約600mごとです。600m変わると分類も変わります
標高 | 香り | 渋味 | コク | ※水色 | |
---|---|---|---|---|---|
ハイグロウンティー | 1200m以上 | 強い | 強い | ライトボディ(スッキリとした軽いコク) | 明るい |
ミディアムグロウンティー | 600~1200m | 芳醇 | やや弱い | ミディアムボディ(ほどよいコク) | やや濃い |
ローグロウンティー | 600m未満 | 弱い | 弱い | フルボディ(しっかりした濃厚なコク) | 濃い |
※水色とは抽出した紅茶の色のことです
つまり、標高ごとの特徴をまとめると
- 標高が高くなるほど香り・渋味が強くなり水色も明るくなる
- 標高が低くなるほど香り・渋みが弱まりコクが深く水色も濃くなる
- ミディアムグロウンティーはその中間
品種によって差はありますが、基本的にそれぞれの紅茶には標高ごとの特徴が反映されています。
また、同じ品種でも栽培されている茶園の場所によって標高が変わることもあります。なので茶園ごとに飲み比べると、同じ紅茶なのにまた違った風味を味わえたりもするんですよ。
またなんとも奥深い・・
セイロンティーの紅茶一覧
先ほども述べた通りセイロンティーは主に7つ品種があります。
今は7つですが、昔は5つの産地を合わせて五大生産地と呼ばれていたんです。それが近年、2つの生産地が加わって七大生産地と呼ばれるようになりました。
それでは、それぞれどんな特徴があるのか、7つのセイロンティーをそれぞれご紹介しますね。
ヌワラエリア
スリランカ中部の山岳地域にあるヌワラエリア地方で栽培されている紅茶です。「セイロンティーのシャンパン」とも呼ばれています。
【ヌワラエリアの特徴】
- 茶葉:緑味がある赤褐色・外見は緑茶に似ている
- 味:ほのかな甘さ・緑茶のような渋味・コクが少ない
- 香り:甘さのあるフローラルな香り
- 水色:淡いオレンジ
標高は最も高い約1600m~1800mのハイグロウンティー。高地産特有の強い渋味と香り高さがあります。
緑茶に近い風味があり、日本茶に飲み慣れた方など日本人に親しみやすい味わいです。
おすすめの飲み方はストレートティー。渋味が強すぎて苦手だと感じた方はミルクティーにするのもおすすめです。
ヌワラエリアについて詳しくはこちら↓
ウバ
スリランカ南東部のウバ地方で栽培されている紅茶です。世界三大紅茶の一つにも数えられています。
【ウバの特徴】
- 茶葉:赤褐色
- 味:爽やかでキレのある渋味深いコク
- 香り:ミントのようなすっきりとした香り
- 水色:赤みの強いオレンジ
濃厚で爽やかな渋味とメントール系の香りを持つハイグロウンティーです。標高は約1400m~1700m。
ウバが持つメントールの香りは、特有のものでウバフレーバーと呼ばれています。
おすすめの飲み方はストレートティーとミルクティー。アイスティーなら水出し紅茶がおすすめ。
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ウダプセラワ
スリランカの中央山岳地帯の東側で栽培されている紅茶です。近年確立された品種で、元々はウバの一部でした。
【ウダプセラワの特徴】
- 茶葉:茶褐色
- 味:キレのある渋味にメントールのような後味、穏やかなコク
- 香り:甘くフルーティーな香り
- 水色:オレンジに近い赤
標高は約1300m~1600mのハイグロウンティー。華やかでフルーティーな香りやウバフレーバーの清涼感ある後味が特徴です。
元々ウバだったので似ている部分がいくつかありますが、香りに甘さがあることと渋味がウバより弱いなどの違いがあり、バランスの取れた味わいになっています。
おすすめの飲み方はストレートティーとミルクティーです。
ウダプセラワについて詳しくはこちら↓
ディンブラ
スリランカ中央のディンブラ地方の山岳地帯南西部で栽培されている紅茶です。日本人のイメージする風味に近く、日本人の味覚にも合った紅茶です。
【ディンブラの特徴】
- 茶葉:茶褐色
- 味:すっきりとしたほどよい渋味とコク
- 香り:ほのかに甘く爽やかな香り、クオリティーシーズンはバラのような香りになる
- 水色:オレンジがかった鮮紅色
標高は約1200m~1600mと、ほかのハイグロウンティーと比べると標高は低め。渋味や香りがほどよくクセもないので、初心者にも飲みやすいです。
シンプルな味わいの紅茶なので、色んな飲み方や料理やお菓子とも合わせやすいでしょう。
おすすめの飲み方はアイスティー。クリームダウンを起こしにくいのでおすすめ。また、ディンブラベースのアールグレイも飲みやすいですよ。
ディンブラについて詳しくはこちら↓
キャンディ
スリランカ中部のキャンディ地方で栽培されている紅茶です。当時のイギリス領セイロンで初めて紅茶栽培が始まった、セイロンティー発祥の地でもあります。
【キャンディの特徴】
- 茶葉:赤みのある茶褐色
- 味:渋味が少なくまろやか
- 香り:甘く控えめ
- 水色:赤味がかったオレンジ
キャンディは標高約400m~500mの場所で栽培されていて、渋味が少なく濃厚な味と、控えめではありますが甘さを感じる香りが特徴です。
マイルドな紅茶なので初心者やクセの強い紅茶が苦手な方におすすめ。
クセが少なく香りが弱いので、アレンジティー向きの紅茶です。特におすすめなのはフルーツティー。
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サバラガムワ
スリランカ南部のサバラガムワ州で栽培されている紅茶。ウダプセラワと同じく、近年確立された品種で元々は後述のルフナの一部でした。
【サバラガムワの特徴】
- 茶葉:黒褐色
- 味:濃厚でほろ苦く黒糖のような甘さがある、渋味は少ない
- 香り:穀物のような香ばしさと甘みがある
- 水色:深い真紅の色
標高は約300m~400mのローグロウンティー。渋味は控えめで黒糖のような甘さとほろ苦い味に、香ばしく甘い香りを持ってます。
ローグロウンティー特有の濃厚さと深いコクを持ってるので、おすすめの飲み方はミルクティーです。
サバラガムワについて詳しくはこちら↓
ルフナ
スリランカ南部にあるサバラガムワ州で栽培されている紅茶です。スリランカの紅茶生産量の6割は、ここルフナと言われています。
【ルフナの特徴】
- 茶葉:黒褐色
- 味:強く濃厚なコクに渋味の少ないまろやかな味
- 香り:麦芽のような香り、スモーキーさも感じられる
- 水色:黒に近い赤茶色
しっかりとしたコクと甘さ、渋味も少ないマイルドな味わいに、麦芽のような香ばしい甘さの香りが特徴。
約200m~400mのローグロウンティーで、セイロンティーの中で最も標高が低い地域で栽培されています。
しっかりした風味を持つルフナは、ミルクティーやアイスティーがおすすめです。
ルフナについて詳しくはこちら↓
その他のセイロンティー
セイロンティーの主な種類をご紹介しましたが、セイロンティーにはほかにも紅茶があります。
ギャル
スリランカ南部のギャル地方で栽培されている紅茶です。七大生産地ではありませんが、比較的手に入りやすくファンも多くいます。
低地産のローグロウンティーで、中東などでチャイ用に輸出されることが多いです。
【ギャルの特徴】
- 茶葉:黒みを帯びた色
- 味:ほのかに甘く強く重厚なコクのある味、渋味は少なめ
- 香り:チョコレートのような香ばしく甘い香り
- 水色:明るいオレンジ色
深いコクとチョコレートのような香りを持った、なかなか個性的な風味を持った紅茶です。その特徴的なコクに加え渋味が少ないので、ブレンドティーを作るときにギャルを入れると、マイルドな味わいになります。
おすすめの飲み方は、アイスティーとミルクティー。
アイスティーにしても濁りにくいので澄んだ紅茶が楽しめ、コクの深いしっかりとした味わいはミルクティーとの相性も抜群です。
セイロンティーのクオリティーシーズンとは?
多くの紅茶にはクオリティーシーズンと呼ばれる、その茶葉が持つ特徴が特に出る時期があります。
セイロンティーは基本1年を通して収穫されていますが、この時期が来ると収穫量が減る変わりに、味と香りが濃くなった高品質の茶葉が収穫されるんです。
毎年楽しみにしている紅茶ファンも多くいるんですよ!
クオリティーシーズンが来るのはいつ?
スリランカの季節には乾季と雨季があり、クオリティーシーズンが来るのは乾季の時期です。雨のない乾季は茶葉にストレスがかかり栄養が蓄えられることで、濃い味わいの紅茶になります。
また、茶園が多くあるスリランカ南部の山岳地帯では、西側と東側で乾季と雨季が来る季節が違います。東側では冬、西側では夏が乾季です。
そして、乾季の影響は高地産の茶葉のみなので、中地産以下の標高では基本クオリティーシーズンがありません。
つまりクオリティーシーズンが来るのは、冬の東側と夏の西側のハイグロウンティーのみなんですね
東側のハイグロウンティー:クオリティーシーズンは冬の1月~2月
- ヌワラエリア
- ディンブラ
西側のハイグロウンティー:クオリティーシーズンは夏の7~9月
- ウバ
ウダプセラワは年2回
ハイグロウンティーであるウダプセラワは、ウバから分かれた紅茶なのでクオリティーシーズンも同じ夏です。
ですが。ウダプセラワの産地はヌワラエリアとも一部隣接しています。そのため隣接している地域ではクオリティーシーズンが冬にも来るんです。
つまりウダプセラワはクオリティーシーズンが年に2回来るんです
セイロンティーの歴史
スリランカは世界1位の輸出国で世界2位の生産国の紅茶大国です。国内生産量のほとんどが輸出用で、イギリスやロシア、中東そして日本など世界各国に輸出されています。
世界中で人気のあるセイロンティーですが、その歴史がいつどこで始まったのかご存じでしょうか?
スリランカが今日の紅茶大国になったのは、植物の病気やコーヒー農園の壊滅などの出来事がきっかけでした。
昔の一大産業はコーヒーだった!?
今でこそ紅茶で有名なスリランカですが、昔はコーヒー生産が盛んな地域だったんです。
始まりは1740年代ごろ、オランダから持ち込まれてコーヒー生産が始まり、1860年代ごろには世界3位のコーヒー大国になりました。
ですが世界3位になった矢先、コーヒー農園は壊滅に追い込まれてしまったんです。
コーヒー産業に代わって始まった紅茶産業
1868年、コーヒー農園はセイロンや周辺諸国で広まったさび病によって壊滅的打撃を受けてしまいました。
カビ菌の一種であるさび病菌に感染することで起こる病気。感染すると葉や茎にさび色の盛り上がった病斑ができ、植物の生育が悪化して最悪枯れることも
このさび病が広まったことでコーヒーの栽培が難しくなり、コーヒー産業から徐々に紅茶産業に移行していくことになります。
ほかにもさび病のことだけでなく、イギリス政府が生産コストの安い紅茶に移行したかったという理由もあったのではないかと言われています
農園を救ったセイロンの茶の神様「ジェームス・テーラー」
この農園壊滅の苦境の中、紅茶栽培を任されたのは「ジェームス・テーラー」というスコットランド人の方でした。
当時コーヒー農園で働いていたテーラーはとても植物の栽培に長けていて、その腕を買われ茶葉の栽培を任されることになったんです。
この時テーラーが最初に紅茶栽培を始めたのは先ほど解説したキャンディ地方ですね
農園主にアッサム種の苗を渡されキャンディ地方で栽培を始めたテーラーは試行錯誤の末、なんと1~2年で茶葉の栽培を成功させたんです。
そこからテーラーの栽培法が広まり確立されていったことで、今度はセイロンティーが国の一大産業になっていきました。
この功績からテーラーは「セイロンの茶の神様」と称えられています。
かつてのコーヒー農園は茶園に変わって、今では世界有数の紅茶大国になったんですね!そりゃ神様として称えたくもなりますよ
ちなみに余談ですが、現在でもセイロンコーヒーを提供している店がスリランカにわずかにあるそうですよ。
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まとめ
- セイロンティーはスリランカ産紅茶の総称で、
- クセが少なく日本人に親しみやすい紅茶、日本に輸入されている紅茶の6割はセイロンティー
- セイロンティーは主に7つの産地がある
- セイロンという名前は昔の国名の名残
- セイロンティーは標高によってハイグロウンティー・ミディアムグロウンティー・ローグロウンティーの3つに区分されている
- 標高によって香りや渋味、水色やコクなどの特徴が変わる
- クオリティーシーズンは山岳地帯の標高の高い産地で夏と冬に来る
- かつてはコーヒーの一大生産地だったがさび病によって壊滅的ダメージを受けた
- コーヒーに代わる産業としてジェームス・テーラーが紅茶栽培を始めた
スリランカ紅茶のセイロンティーは、日本でも飲む機会の多い紅茶です。
クセがなく飲みやすく、さまざまな飲み方もできるので初心者の方や好みの紅茶を探している方はセイロンティーから自分の好みの紅茶を探してみてもいいでしょう。
その中に好みの紅茶が見つかるかもしれませんよ。
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